本の紹介
「ガード下の犬ラン」
ホームレスとさみしさを分かち合った犬
2000年6月に実際に起こった野宿者（ホームレス）殺人事件を題材にした童話です。
墨田区のガード下に住んでいた野宿を余儀なくされた小茂出清太郎（68）が中学生たちに虫けらのように殺される事件がありました。私たちが、2000年3月に野宿者支援の活動を始めてから、小茂出さんが亡くなり、ガード下で花や線香を供えてみんながお祈りしているところをニュースで見ました。つらい思いでニュースを見ながら､身近ではこんなことが起こらないで欲しいと思っていました。
しかし、2002年1月に東村山市で鈴木邦彦さんが中学生/高校生による暴行で殺されてしまい、ついに昨年はこうした事件が全国で何件もおこりました.つい先日は鈴木邦彦さんの1周年の追悼と、野宿生活者の人権を考える集いを行ったばかりです。
作者の関さんは、犬にかかわる感動的な実話を元に童話を書いている方です。でも、この話は主役はやはり野宿者（ホームレス）のおじちゃんです。関さんは「おわりに」のなかで、「時間は、いろいろなものを消し去ります。・・・このガード下におじちゃんとラン（犬）が暮らしていた形跡は、なにもありません。・・・ひとりの人間と一匹の犬がいたことを、ぼくは自分の記憶にとどめていたいと思います。」書かれています。誰からも無視される存在の野宿者に視点を当てて、子どものために本当によく書いてくれたと思います。大人だって読いだほうがいいと思っています
小茂出さんがガード下で、電車のガタンゴトンという騒音を聞きながら亡くなっていっただろう事を考えると、東村山の鈴木さんも線路脇に住みながら、踏み切りのカンカンという音を聞きながら亡くなっていったのだろうということと重なり、胸がつかえる思いまします。
弱いものが、より弱いものを殺す社会！私にはそんな風に思えます。東村山の事件にかかわった高校生には今日（2003.2.4）地裁八王子支部で判決がありました。「暴行を楽しんだふしもあり、人間性に欠けた冷酷非道な犯行」として、少年法が定める不定期刑の懲役３年以上５年６ケ月以下です。（もうひとりの高校生は２年６ヶ月以上５年以下）
誰かが、この加害少年の側からの表現をしてくれないでしょうか・・・こうしたことが表現され、社会の中で話されることが、少年の犯罪を未然に防いでくれるかもしれません。
関 朝之 作 はせがわいさお 画 2003.02.02 発行
Ａ５上製・144頁・定価:1200円+税 小学校中学年以上向き
ハート出版 「ガード下の犬ラン」
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■1983年１月12日――横浜で中学生ら10人がホームレスを襲撃する。２月11日に逮捕される。
■1995年10月18日――数人の若い男が、大阪市道頓堀の戎橋から、ホームレスの男性(63)を道頓堀川に投げ落とし、殺害。
■1995年10月23日――京都府京都市鴨川の河川敷で寝ていたホームレスの男性（52）が、少年（17）たちのグループに暴行をうけ、一週間のケガ。
■1996年５月24日――東京都渋谷区の代々木公園で暮らすホームレスの男性がなぐられて死亡。大田区のアルバイト店員（17）や国分寺市内の私立高校１年生（16）ら５人が逮捕される。
■2000年6月15日――東京都墨田区のガード下近くの路上でホームレスの男性２人が少年２人組に襲われる。小茂出清太郎さん（68）が死亡、１人が軽傷をおった。
■2001年9月18日――大阪市天王寺区の路上で、野宿生活をしていた男性（53）が暴行をうけて死亡した。同市内の市立中学３年の男子生徒（15）が出頭し、傷害致死の疑いで逮捕された。
■2002年1月25日――東京都東村山市の「美住町ゲートボール場」で、ホームレスの男性（55）が、暴行をうけて死亡。市立中学校の２年生３人が傷害致死の疑いで逮捕された。
■2002年４月21日――神奈川県茅ヶ崎市の防砂林でホームレス男性３人が、エアガンを持った若い男６人に襲われた。襲った男たちは、至近距離から数発ずつエアガンを撃ち、ホームレスの男性３人は、顔などに５日間のケガをした。襲った６人は暴力行為などの疑いで逮捕された。
■2002年8月11日――千葉市中央区の市立公園体育館入口付近で、ホームレスの男性２人が、４人組の若い男たちに襲撃され、死亡した。死亡したのは54歳と60歳の男性。４人組は逃走した。
■2002年10月８日――川越市の県営公園内で、ホームレスの男性らが３人の少年に襲われ、ケガをした。少年らは男性が逃げたあと、布団に火をつけるなどした。逮捕された少年らは、「面白かった」と供述したという。
■2002年11月26日――埼玉県熊谷市で、中学生ら３人に襲われたホームレスの男性（45）が、死亡した。中学生らは「からかってやろう」と暴行、気を失った男性を放置した。
ハート出版のHPより
